勇気をもらった物語たち

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心にひびいた漫画たちを紹介していきます。たまに日常や生きてて思ったこともかきます。

金田一蓮十郎先生が描く百合短編集「マーメイドライン」感想

金田一蓮十郎「マーメイドライン」表紙

マーメイドライン【電子書籍】[ 金田一蓮十郎 ]

ライアー×ライアー」「ゆうべはお楽しみでしたね」「ラララ」など
ちょっと変わった人間関係の形を描く金田一蓮十郎先生。
百合姫で百合漫画を書いていたとは…!知りませんでした。

金田一先生の漫画は、
一風変わった設定だけどいざ読んでみると
相手との向き合い方や、その本質を深く考えさせられるようなお話ばかり。

なので大ファンです!

というわけでまよわず購入しました。

期待通り、性別とか、百合とかの前に「相手が好きだから」を感じる内容でした。

 

4組の女の子?たちの物語が入った短編集

1話完結のものも、2話、3話にまたがるものもあります。
どれも短編で読みやすく、内容も「相手のことが好き」を考えさせられるものばかり。

ふんわりしたかわいい百合の世界というよりは、
現実世界で女の子?同士で恋をすることに対する世間の目なども描かれています。

それでも常識的な偏見にとらわれず、
相手のことを思うメインキャラクター達は応援したくなる人ばかりでした。

「常識的な偏見」て変な言葉だなあ…「常識」って本来いいことのはずなのに。よくないこともあるか。

 

ちなみに、なぜ「女の子?」表記なのかというと…。
それは本編を読めばわかります。この後少しネタバレしますが。笑

 

それぞれの短編感想

「めぐみとあおい」

この単行本のタイトル「マーメイドライン」の元にもなっている、
おそらくメインのお話。話数も一番多いです。

「私 人魚姫なのよ」とちょっと不思議な発言が飛び出す女の子、めぐみ
おしゃべりなごく普通の女の子、あおい

「ずっと側にいたいのなら ずっと友だちでいなくてはいけない」。
めぐみが選んだ幸せの形は、人魚姫の物語のようにちょっと切ない、
だけどめぐみにとってはとても幸せな選択。

だけど、その幸せも長くは続かなくて…。

2人の交流や関係性だけでなく、
「同性愛」に対する周りのシビアな反応も描かれます…。

「好き」の種類が違うことについて考えたり、
男の子とも付き合ってみたり、
周りからの攻撃から相手を守る方法を考えたり。

現実的な側面も多く描かれて、実際に「同性を好きになるとは」ということを考えさせられる。

文句なしのハッピーな関係じゃなくても、
ふたりがお互いのことを考えて築いたふたりだけの関係に
じんわりとあたたかいものを感じました。

 

「あゆみとあいか」

「ステキなお嫁さんになりたい」という願いを持っていたあゆみ

彼氏の竜之介と結婚することになるだろうと
信じて疑わなかったけれど、
ある日突然、彼氏から別れを告げられ……。

その理由は、彼は性同一性障害だったから。
彼氏はいかちゃんになって再び目の前に現れます。

別れを告げた理由は「こんな自分は嫌だと思われると思って」と。
しかし、あゆみは「こんなに女の子を可愛いと感じたことはない」
彼(彼女???)を受け入れます。

私はこの話が一番好きだー!

ステキなお嫁さんになりたかったあゆみだけど、
「ステキなお嫁さんをもらう側になるのもいいかもと思った」という言葉で
第一話は締めくくられます。

竜之介を「好き」という気持ちがあったからそう思えた。
私は性別とか種族とか関係なく目の前の相手が好きっていうのが大好きなので、
この話は心に響きました……!

2話ではあいかの葛藤も描かれるのですが、
普通とは違った性をもつ自分のことを
あゆみのおかげで前向きに受け入れられた姿は本当にステキでした。

 

 

 「ゆかりとまゆこ」

上司との愛人関係が終わり、傷心のまゆこのために、
ゆかりはいろんな場所にデートに出かけることを提案。

ゆかりには彼氏もいて、デートと言っても手をつなぐくらい。
決して本当の恋愛ではないけれど、
まゆこは感じなかったドキドキをゆかりは感じていて…。

でも、まゆこに恋人関係を求めるとかではなく、
彼氏との関係も、小さな不満はあるけど良好。

「単純なハッピーエンド」ではないけど、
これも一種のハッピーエンドでいいんじゃないか…と思うゆかり。

誰にも伝えず、自分の心の中でそっと完結する物語。
こう言った気持ちを抱えた経験のある人って、意外と多いのではと思ってしまう。

 

「三浦さんと私」

とっても短い短編ストーリーでした。

長い髪のキレイな三浦さんが気になる岡部

だけど、「彼氏のため」にバッサリ髪を切ってショートになった彼女に対して
「彼氏のためにそこまでできるなんて可愛い」と肯定的に考える。

こうだから相手が好き→こうでなくても相手が好き になるって
こういうことか…と思ったお話でした。

そんな大げさな話じゃなくて、
恋愛どころかただのクラスメイト程度の交流なんですが
そこが逆になのか、相手に対して抱いた感情をきれいなものに感じてしまいました。

 

同性愛に「単純なハッピー」は難しい

全体を通してそんなことを感じました。

あとがきで金田一先生も
「私なりに真面目に女性が女性に恋する様を描きました」と言っていて、
同性愛について真剣に考えて創られたお話たちなのかなぁ…と。

あゆみとあいかはとっても幸せそうだったけど、
これからいろんなハードルを越えていかなきゃいけないと思います。

でも、形だけは整って見える仮面夫婦とか、
世の中の「普通」に囚われた関係よりも
この漫画の登場人物たちのように、本当に相手を「好き」な関係って
何倍も幸せで価値のあるものだよなって、やっぱり思います。

あらすじ解説だけでは伝わらない雰囲気があるので、
是非是非読んでほしい一冊です!

 

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